「プラスチック新法」ー事業者が取り組むことは?何をすればよい?取組み事例も紹介 | MANABInoHAKO

「プラスチック新法」ー事業者が取り組むことは?何をすればよい?取組み事例も紹介

対象は「プラスチックを扱う事業者」ECサイト、小売業、飲食店も!

プラスチック資源循環促進法(プラスチック新法)では、プラスチックの資源循環に向けて、

「プラスチックのライフサイクル全体において関わりのある、全ての事業者、自治体、消費者」が
相互に連携してプラスチック資源循環を促進ために取組むことが求められています。

取組むべき企業は製造や工場の事業者だけでなく、
ECサイトを含む小売業、宿泊業、飲食店、テイクアウト・配達サービス業、洗濯業と幅広い業種が対象
となります。

事務所や店舗等で事業を行う企業も含め
プラスチックを扱う多くの事業者の方が「排出事業者」となるのです。

      1. 対象は「プラスチックを扱う事業者」ECサイト、小売業、飲食店も!
  1. 事業者が取組むこと4項目
    1. 取組み①【設計】「プラスチック使用製品設計指針」
      1. 設計指針(1) 構造について(減量化、包装の簡素化、長期使用化・長寿命化など)
      2. 設計指針(2) 材料について
      3. 設計指針(3) 製品のライフサイクル評価
      4. 設計指針(4) 情報発信及び体制の整備
      5. 設計指針(5) 関係者との連携
      6. 設計指針(6) 製品分野ごとの設計の標準化並びに設計のガイドライン等の策定及び遵守
    2. 取組み②【使用】「特定プラスチック使用製品の使用の合理化」
      1. 対象となる製品「特定プラスチック使用製品(12品目)」とは?
      2. 対象者と特定プラスチック使用製品多量提供事業者
      3. 特定プラスチック使用製品の事業者が実施すべきこと
        1. 【提供方法の工夫】
        2. 【提供する特定プラスチック使用製品の工夫】
      4. 提供時の工夫を実施した事業者の取組み事例
    3. 取組み③【回収】「製造・販売事業者等による自主回収・再資源化」
    4. 取組み④【排出抑制】「排出事業者による排出の抑制・再資源化等」
      1. (1)排出事業者が取り組むべき排出の抑制・再資源化等
        1. プラスチック使用製品産業廃棄物等
        2. 排出事業者の排出の抑制・再資源化等に関する判断基準省令の概要
      2. (2)再資源化事業計画
  2. 取り組みが不十分だと勧告・公表・命令、罰則も!

事業者が取組むこと4項目

この法律では、プラスチックを扱う多くの事業者の方が「排出事業者」が対象となり、プラスチックを使用する製品を①設計する段階から配慮されることが求められ、②使用において、また③回収や最終的な④排出抑制・再資源化へまで取組みが求められます。

この取組みの具体的な内容は下記の通りです。事業者はこの4項目への取組みが必要であることが掲げられています。

取組み①【設計】「プラスチック使用製品設計指針」
 対象物:プラスチック使用製品 対象者:プラスチック使用製品の製造事業者等

取組み②【使用】「特定プラスチック使用製品の使用の合理化」
 対象物:特定プラスチック使用製品(12品目) 対象者:特定プラスチック使用製品提供事業者等

取組み③【回収】「製造・販売事業者等による自主回収・再資源化」 対象物:自らが製造・販売・提供したプラスチック使用製品 対象者:プラスチック製品の製造・販売・提供事業者

取組み④【排出抑制】「排出事業者による排出の抑制・再資源化等」
 対象物:プラスチック使用製品産業廃棄物等 対象者:排出事業者

※さらに対象者が市区町村での取組みとして
「市区町村によるプラスチック使用製品廃棄物の分別収集・再商品化」があります。

それぞれの概要は次の通りです。

取組み①【設計】「プラスチック使用製品設計指針」

対象者は「プラスチック使用製品の製造事業者等」
あらゆるプラスチック使用製品の製造事業者等が【設計】段階で取り組むべき及び配慮すべき事項として、構造や材料、ライフサイクル評価など下記6項目が定められています。

設計指針(1) 構造について(減量化、包装の簡素化、長期使用化・長寿命化など)

①減量化:できるだけ使用する材料を少なくする
②包装の簡素化:過剰な包装を抑制する
③長期使用化・長寿命化:耐久性を高める、繰返し使用に耐える、容易に部品交換できる・修理できる
④再使用が容易な部品の使用又は部品の再使用
⑤単一素材化等:製品全体又は部品ごとの単一素材化又は使用する素材の種類等を少なくする
⑥分解・分別の容易化:部品ごとに容易に分解・分別、部品等を取り外す必要工程数を少なくする、使用材料の種類の表示
⑦収集・運搬の容易化:可能な限り収集・運搬を容易にするような重量、大きさ、形状及び構造とする
⑧破砕・焼却の容易化:再使用又は再生利用が難しい部品等は、破砕や焼却の容易化に配慮する

①減量化
②包装の簡素化
④再使用が容易な部品の使用

引用元:プラスチック使用製品設計指針と認定制度 | プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラ新法)の普及啓発ページ (env.go.jp)

設計指針(2) 材料について

①プラスチック以外の素材への代替
②再生利用が容易な材料の使用:材料の種類を減らす、再生利用を阻害する添加剤等の使用を避ける
③再生プラスチックの利用
④バイオプラスチックの利用

設計指針(3) 製品のライフサイクル評価

安全性や機能性その他の性能、(1)構造、及び(2)材料において、製品のライフサイクル全体を通じた環境負荷等の影響を総合的に評価する

設計指針(4) 情報発信及び体制の整備

・企業等のホームページ、製品本体、取扱説明書等に、必要な範囲で下記等の情報を記載すること
①製品の構造、②部品の取り外し方法、③製品・部品の材質名、④部品の交換方法、⑤製品・部品の修理方法、⑥製品・部品の破砕・焼却方法、⑦製品・部品の収集・運搬方法、⑧処理時における安全性確保及び環境負荷低減のための注意事項
・プラスチック使用製品を廃棄又は修理・部品交換を行おうとする者等に対し、製品の構造、部品の取り外し方法、プラスチックの種類等の情報を提供することができるような体制整備を図ること
・本指針に則した設計を実施するため必要な人員を確保すること
・プラスチック使用製品の設計に係る取組の状況を把握し、その情報の開示を積極的に行うこと

設計指針(5) 関係者との連携

製造事業者等と材料・部品等の供給者、再商品化事業者、再資源化事業者、プラスチック使用製品を使用及び排出する事業者、消費者、国及び地方公共団体等との間で相互に必要な協力を行うこと

設計指針(6) 製品分野ごとの設計の標準化並びに設計のガイドライン等の策定及び遵守

業界団体等における製品分野ごとの設計の標準化やガイドライン等を策定、遵守するよう努めること

取組み②【使用】「特定プラスチック使用製品の使用の合理化」

 対象物:特定プラスチック使用製品(12品目) 対象者:特定プラスチック使用製品提供事業者等

「特定プラスチック使用製品」を提供する事業者に、業種や業態の実態に応じて、提供方法や提供する製品の工夫の中から有効な取組を選択し、合理化に取り組みます。

対象となる製品「特定プラスチック使用製品(12品目)」とは?

商品の販売又は役務の提供に付随して消費者に無償で提供される主としてプラスチック製の以下12製品が「特定プラスチック使用製品」として指定されています。

①フォーク ②スプーン ③テーブルナイフ ④マドラー ⑤飲料用ストロー ⑥ヘアブラシ
⑦くし ⑧かみそり ⑨シャワーキャップ ⑩歯ブラシ ⑪衣類用ハンガー ⑫衣類用カバー

特定プラスチック使用製品の使用の合理化 | プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラ新法)の普及啓発ページ (env.go.jp)

詳細は、https://sustainable-bases.com/specific12productsに記載しておりますのでご参照ください。

対象者と特定プラスチック使用製品多量提供事業者

本制度では、「特定プラスチック使用製品」の削減に向けて目標を設定し、「使用の合理化」に取組むことが掲げられています。
特に、前年度において提供した特定プラスチック使用製品の量が5トン以上の事業者は「特定プラスチック使用製品多量提供事業者」として、取組が著しく不十分な場合に勧告・公表・命令等が行われることがあります。

特定プラスチック使用製品の事業者が実施すべきこと

上記12品目の特定プラスチック使用製品を扱う事業者は、使用の合理化の取組みとして、下記の様な工夫を行うことにより、プラスチック使用製品廃棄物の排出を抑制することが求められています。

【提供方法の工夫】

①特定プラスチック使用製品有償での提供
②特定プラスチック使用製品を使用しないようにする手段として景品等を提供(ポイント還元等)
③提供する特定プラスチック使用製品の必要有無(消費者の意志)を確認
④提供する特定プラスチック使用製品の繰り返しの使用を促進

【提供する特定プラスチック使用製品の工夫】

①薄肉化や軽量化、設計又はその部品、原材料の種類(再生可能資源、再生プラスチック等)について工夫された特定プラスチック使用製品を提供する
②商品又はサービスに応じて適切な寸法の特定プラスチック使用製品を提供する
③繰り返し使用が可能な製品を提供する

提供時の工夫を実施した事業者の取組み事例

上記の工夫を施した事業の取り組み事例も掲載されています。

飲食店やコンビニエンスストアなどで、木製スプーンや紙ストローを提供する。
テイクアウトの飲料の蓋をストローが不要な飲み口機能付きに変更する。
スプーンやフォークを有償で提供する。
宿泊施設で、アメニティを部屋には置かず、必要な方はフロントに声をかけたりアメニティコーナーで受け取ることができるようにする。
クリーニング店でハンガーを店頭回収し、リユースまたはリサイクルを行う。

特定プラスチック使用製品の使用の合理化 | プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラ新法)の普及啓発ページ (env.go.jp)

取組み③【回収】「製造・販売事業者等による自主回収・再資源化」

 対象物:自らが製造・販売・提供したプラスチック使用製品 対象者:プラスチック製品の製造・販売・提供事業者

プラスチックの資源循環の促進のためには、製品の性状や排出実態について情報を持つ製造、販売、提供事業者が、自治体や消費者と協力して積極的に自主回収・再資源化を行うことが期待されます。
回収拠点が増加すれば、使用済製品の分別・回収がしやすくなり効率的な資源集めが可能になります。

本制度では、製造・販売事業者等が「自主回収・再資源化事業計画」を作成し、国の認定を受けることで、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)に基づく業の許可がなくても、使用済プラスチック使用製品の自主回収・再資源化事業を行うことができます。

製造・販売事業者等による自主回収・再資源化 | プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラ新法)の普及啓発ページ (env.go.jp)

なお、「再資源化」に熱回収は含まれません。

熱回収のみの再資源化事業計画は、認定の対象とはなりません。

取組み④【排出抑制】「排出事業者による排出の抑制・再資源化等」

 対象物:プラスチック使用製品産業廃棄物等 対象者:排出事業者

排出事業者には、プラスチック使用製品産業廃棄物等の排出抑制・再資源化等の取組が求められます。


(1)排出事業者が取り組むべき排出の抑制・再資源化等

排出事業者の判断基準省令に基づく取組は、小規模企業者等を除き、すべての排出事業者(事務所、工場、店舗等で事業を行う事業者の多くが対象)に求められます
また、多量排出事業者は、産業廃棄物等の排出の抑制・再資源化等に関する目標を定め、取組を計画的に行うことが求められます。
必要な場合は排出事業者に必要な指導及び助言を行います。多量排出事業者に対しては取組みが著しく不十分な場合は勧告・公表・命令等を行うことがあります。

※小規模企業者等:従業員の数が20人以下の、商業・サービス業以外の業種を行う会社・組合等、または、従業員の数が5人以下の、商業又はサービス業の業種を行う会社・組合等
※多量排出事業者:前年度のプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出量が250トン以上の事業者


プラスチック使用製品産業廃棄物等

プラスチック使用製品産業廃棄物等」とは、プラスチック使用製品廃棄物のうち廃棄物処理法で規定された産業廃棄物に該当するもの又はプラスチック副産物(製品の製造、加工、修理又は販売その他の事業活動に伴い副次的に得られるプラスチック)を指します。

排出事業者による排出の抑制・再資源化等 | プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラ新法)の普及啓発ページ (env.go.jp)



産業廃棄物とは、事業活動に伴って生じた廃棄物を指します。
事業活動に伴って排出されたプラスチック使用製品廃棄物であれば、プラスチック使用製品産業廃棄物等に該当します。

オフィスでも事業活動に伴って生じるボールペン等の文具類の廃棄もプラスチック使用製品産業廃棄物等の対象となります。また、工場や店舗にあっては、事業活動に伴って生じるプラスチック製の端材や緩衝材等も対象となります。


排出事業者の排出の抑制・再資源化等に関する判断基準省令の概要

1.排出の抑制・再資源化等の実施の原則
可能な限り①排出を抑制する、②適切に分別して排出する、③再資源化を実施することができるものは再資源化を実施する。④再資源化を実施することができないものであって、熱回収を行うことができるものは、熱回収を行うこと。
2.目標の設定
多量排出事業者は、排出抑制及び再資源化等に関する目標を定め、達成のための取組を計画的に行う。
3.情報の公表
多量排出事業者は、毎年度、前年度の排出量及び目標の達成状況に関する情報をインターネット等で公表するよう努める。
排出事業者(多量排出事業者を除く)は、毎年度、前年度の排出量と、排出の抑制及び再資源化等の状況に関する情報をインターネット等で公表するよう努める。
4.情報の提供
再資源化等を委託する場合、受託者に対して、プラスチック使用製品産業廃棄物等の排出及び分別の状況、性状及び荷姿に関する事項といった必要な情報を提供すること。
5.加盟者における排出の抑制及び再資源化等の促進
本部事業者は、加盟者の事業において排出の抑制及び再資源化等に関し必要な指導を行い、排出の抑制及び再資源化等を促進するよう努めること。加盟者は、本部事業者が実施する排出の抑制及び再資源化等の措置に協力するよう努めること。

他、教育訓練、管理体制の整備、関係者との連携において示されています。

詳細は、引用元「排出事業者による排出の抑制・再資源化等 | プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラ新法)の普及啓発ページ (env.go.jp)」をご参照ください。


日本は、2030年までに、使い捨てプラスチックを累積で25%

排出抑制することを目指すべき方向性として掲げています。

(2)再資源化事業計画

排出事業者等が「再資源化事業計画」を作成し、国の認定を受けることで、廃棄物処理法に基づく業の許可がなくても、プラスチック使用製品産業廃棄物等の再資源化事業を行うことができます。

取り組みが不十分だと勧告・公表・命令、罰則も!

扱うプラスチックの量に関わず、この特定プラスチック使用製品を提供する全ての事業者に取り組みが求められています。
必要な場合は指導及び助言が行われ、製品を多く扱っている多量提供事業者に対しては、取組が著しく不十分な場合に勧告・公表・命令・罰則の対象になることがあります。(指導・助言に留まらず、勧告・公表・命令の措置の後、命令にも違反した場合は、罰金も処せられます。)

新法が施行された背景には、海洋プラスチック問題や資源の問題があります。
海洋を漂うプラスチックゴミは1億5,000万トンと言われ、また、ほとんど分解されることなく、海洋生物の生態系に悪影響を及ぼしています。

また、一度使用すると廃棄される「ワンウェイ」の容器包装の廃棄量(1人当たり)が世界で2番目に多いと指摘されていることや未利用の廃プラスチックが一定程度あること、アジア各国による輸入規制が拡大してより一層国内資源循環が求められていることからも資源・廃棄物制約への幅広い取組みが求められます。

不可能な資源への依存度を減らして再生可能資源に置き換えること、使用された資源を徹底的に回収して何度も循環利用することなどにより、プラスチックの資源循環を総合的に推進することが必要です。

日本国内でプラスチック資源を循環させる必要性が一層高まっています。